バリの何それ?!第56話2004.06.18発行

スカモト先生〜5+5=9〜

インドネシア・バリ島での摩訶不思議体験談&失敗談&バカ話

どこの世界にも子供にとっての“名物先生”はいるもので、バリ島も例外ではない。
今回は、バリ島の名物先生の話をしよう。
(…といっても、happyはバリ島の学校に通っていたわけではないので聞いた話である。)

今はもう60歳を越えるおじいさんだ。
バリ島に定年退職という制度は確立していないが、●スカモト先生●は
10年ほど前に小学校教員の仕事を辞め、今は農業と牛飼いで生計を立てている。

 

スカモト先生、現役時代はバリバリのスパルタ教師だった。
バリ島なだけに、お約束の小道具は竹刀ではなく竹のムチ。
先生の家では牛を飼っており、この竹のムチは“牛”兼“生徒”用。
当時は毎日、生徒たちをキュウキュウ言わせていたそうだ。

そんな怖いスカモト先生に、生徒たちが逆襲できるのは算数の時間であった。
小学校1年生だから、まだまだ計算がスラスラとはできない。
先生は両手を使って、一生懸命教える。

「5+5=…」「9!」。「3+7=…」「9!」。「6+4=…」「9!」。

他の一桁計算はそこそこできるのに、なぜか、答えが「10」に
なるべき計算の回答は全て「9」と答える子供たち。
生徒が「9!」と言えば言うほどムキになるスカモト先生。

実は、スカモト先生には指が9本しかない。

若い頃、山で牛のエサにする草を刈っていて自分の指も刈ってしまったのだ。
見事に左手の小指は根元から1本なくなってしまった。

日本だったら、先生の指が1本なかったら、生徒たちは怖がりそう
(別の意味で)なのだが(偏見の意は全くないです…)、ここはバリ島。
田舎ほど、そして年配の人ほど、手の指や足の指がない人によく出会う。
それは、生まれながらの病気などが原因なのではなく、
殆どが農作業事故によるものであるという。

ちなみに「スカモト」という名前は、子供たちがつけたアダナである。
先生は、写真を撮るのが大好きで、当時のバリ島では珍しい
日本製のカメラを、自慢気に授業中も首から下げていたという。

なので、スカ(suka=好き)モト(moto=写真fotoの派生語と思われる)。

顔はコテコテのバリ系だが、先生は昔から日本人に憧れていた。
常にカメラを持ち歩くことで日本かぶれをアピールし、
なぜかスカモト先生のクラスだけに日本語の授業があった。
そして、つけられたアダナ「スカモト」も“味の素”に似ていて
日本人っぽいという理由で、実はとても気に入っていた。

 

happy、先日も、そんなスカモトじいさんに「おぉ、日本人かい?」と話かけられた。
今も“首からカメラ”の日本人スタイル…もとい、スカモトスタイルは健在だ。